- 「私は優秀な副捜査官でした! とても優秀だった。殺人事件を解決し2日で犯人を見つけた。手柄を焦ったのは事実ですが、時間の猶予はなく、実際のところチャンスはあった。あなたの言うところの、帝国への貢献をしていた。秩序を維持するのにやり過ぎということがあるでしょうか? なのにこんなことになるとは」
- ―シリル・カーン[出典]
シリル・カーン(Syril Karn)は人間の男性で、帝国時代にプリオックス=モーラーナ統合ホールディングスの保安監査チームに仕えた副捜査官。野心的な捜査官であるカーンは秩序と正義を守ることを心からの信念としており、反乱運動の芽を摘んで犯罪者を摘発することで、銀河帝国において名を挙げたいと願っていた。5 BBY、惑星モーラーナ1でプリ=モーの職員クラヴァス・ドレザーとヴァーロ・スキッフが殺される事件が起きた際、カーンは本件を事故として処理せよというハイン主任捜査官の命令を無視し、容疑者であるケナーリ出身の男の情報を募った。
容疑者のキャシアン・アンドーがフェリックスに住んでいることを知ったカーンは、ライナス・モスク巡査部長とともにチームを率いて現地へ赴いた。カーンはキャシアンの養母マーヴァ・アンドーの住居を捜索したが、キャシアンはルーセン・レイエルとの待ち合わせのため不在だった。間もなく容疑者の居場所が判明すると、キャシアンやレイエルとの間に戦闘が発生し、プリ=モーの職員数名が命を落とした。カーンもキャシアンらに拘束され、敵の逃亡を許してしまうという失態を演じた。この事件の後、帝国保安局のブレヴィン監査官がモーラーナ1へ送り込まれ、カーンの行動が結果として帝国によるモーラーニ星系の直接支配を招くこととなった。
職を失い、母親イーディが暮らすコルサントの実家に戻ったカーンは、おじハーロの紹介で帝国標準局に再就職した。しかし彼は執念深くアンドーの情報を探り続け、同じくアンドーやレイエルの手がかりを探していた帝国保安局の監査官デドラ・ミーロの関心を引いた。カーンはミーロに有益な証言を提供することができなかったが、彼女の計らいで標準局で昇進を遂げた。カーンはミーロとの出会いに運命的なものを感じ、彼女の力になろうとした。申し出はあえなく拒否され、二度と近づくなと警告までされたが、カーンはのちにアンドーを探すためフェリックスを再訪した際、リックス通りで発生した暴動に巻き込まれたミーロの命を救った。
経歴[]
生い立ち[]
- 「お前が活躍しているときに呼んでくれていれば、せめて思い出は残ったのに」
- ―シリル・カーンに対し、イーディ・カーン[出典]
人間の男性、シリル・カーンは厳格な母親イーディ・カーンの息子として生まれた。彼にはハーロという名のおじがおり、ハーロはコア・ワールドの惑星コルサントの[6] 政界で[1] 強い影響力を持っていた。[6] シリルはコルサントで育ち[1]、ギャラクティック・シティのレベル91にあるアパートメントで幼少期を過ごした。幼い頃、シリルはクローン・トルーパーのフィギュアを所有し、ベッドルームに飾っていた。[1] イーディは息子が成功した人生を歩めるように努め[7]、最終的にシリルはモーラーナ宙域の企業当局であるプリオックス=モーラーナ統合ホールディングス(プリ=モー)に就職することになった。[3] 彼は母親をコルサントに残して[6] 惑星モーラーナ1に移り住み、プリ=モー保安監査チームの一員としてコーポレート保安本部に出勤した。[3] プリ=モーの職員として働いていた頃、シリルは一度たりとも母親を職場の惑星に呼ばなかった。シリル本人曰く、いつ来てもいいとは伝えていたが、イーディにとってそれは招待の言葉には程遠く、結局2人がこの頃に直接顔を合わせることはなかった。[6] 他の大半のプリ=モー職員より真面目に職務に取り組んでいたシリルは、5 BBYの時点で副捜査官の階級に上り詰めていた。また彼はプリ=モーの制服を仕立て屋に出し、ポケットや縁取りを追加する改造を加えていた。[3]
大失態[]
モーラーナの殺人事件[]
- 「プリ=モーの職員2人が殺されたんだぞ!」
- ―シリル・カーン[出典]
5 BBY、プリ=モーの職員であるクラヴァス・ドレザー衛兵伍長とヴァーロ・スキッフが当局のお膝元であるモーラーナ1のレジャー・ゾーン付近で何者かに殺害される事件が起きた。カーンはこの事件を担当し、ハイン主任捜査官に提出するための詳細な資料を翌朝までにまとめ上げた。事件には目撃者がいなかったが、カーンは殺された2人が勤務時間中にレジャー・ゾーンの売春宿を訪れていたことや、その売春宿でケナーリ生まれの女について尋ねまわっていた不審な男がいたことを突き止めていた。事件の翌朝、カーンは報告書を携えて保安本部内のハインのオフィスを訪ねた。[3]
ハインはクラヴァスがひどく不快な男であったことや、殺された2人が職務規則に違反していたことを指摘し、本件を事故として処理するようカーンに指示した。この日ハインは帝国領域司令部の総括に出頭する予定があり、銀河帝国に報告する犯罪率を少しでも低く抑えたいと考えていたのである。ハインはカーンに、プリオックス=モーラーナが帝国の注意を引かないよう努めることこそが職員全員にとっての利益につながると念を押して去っていった。[3]
しかしカーンは上司不在の職場で調査を続け、部下に命じてモーラーナ星系の航行記録を調べさせた。その結果、オーリーン・スター・キャブかブレオン・デイヴァンと思われる謎の亜光速船がプリ=モーの検問を通り抜けていたことが発覚した。彼はこの船の到着時刻を徹夜してでも調べ上げるよう部下に命じ、結果的に容疑者が惑星フェリックス在住であることを特定した。カーンは別の職員たちにフェリックス在住のケナーリ人の男を探すよう指示したが、帝国の人口調査の記録が古く、該当者が見つからなかった。職員たちは管轄外の惑星でこれ以上の情報収集を行うことに消極的だったが、カーンは現地で情報提供を呼び掛ける告示を出すよう厳命した。[3]
しばらくして、フェリックスの住民ティム・カルロからキャシアン・ジェロン・アンドーに関する情報が寄せられた。アンドーは記録ではフェスト生まれとなっていたが、帝国に対する数々の犯罪歴があった。カーンはアンドーの古いホログラム画像と、売春宿で不審な男を目撃したホステスの証言により、アンドーが容疑者で間違いないと判断した。フェリックスでアンドーを逮捕するため、カーンはライナス・モスク巡査部長を保安本部に呼び寄せた。他の大半のプリ=モー職員たちとは対照的に、モスクは犯罪捜査に極めて積極的であり、カーンのやり方に強く賛同した。カーンも捜査チームの一員としてフェリックスに同行することに決め、モスクもその判断を支持した。[8]
キャシアン・アンドー捜索[]
- 「ある状況においては……何もしないリスクが最大のリスクになる。まさに今こそがそのような時であり、その時を皆と共にできて光栄だ。この道を信じて進もう。成功と…そして正義のために」
- ―シリル・カーン[出典]
カーン副捜査官とモスク巡査部長は12名のプリ=モー当局保安部隊隊員を連れてプリオックス=モーラーナ人員運搬船に乗り込み、フェリックスに旅立った。ハイパースペース航行中、カーンは職員たちの前で今回の任務の重要性を説明し、共に職務に当たれて光栄だとコメントした。プリ=モーの部隊は3つに分かれ、カーンとモスク率いる西チームがアンドーの住居に向かうあいだ、北チームと東チームはフェリックスの街で所定の位置について挟み撃ちに備える手はずになった。[8] 人員運搬船がリアルスペースに出た後、カーンたちは3機の機動タック=ポッドに乗り込んでフェリックスの大気圏に降り、街の近くに着陸した。[5]
一方その頃、アンドーは盗品のインペリアルN-S9スターパス・ユニットを売って逃亡資金を確保するため、バイヤーのルーセン・レイエルと待ち合わせをしていた。[5] 反乱ネットワークの運営者である[9] レイエルは、アンドーがプリ=モーに手配されていることを承知の上で、彼の人材としての価値を見極めるためフェリックスにやって来た。そのためカーンとモスクたちが踏み込んだ時、アンドーは住居にいなかった。カーンたちはアンドーの養母であるマーヴァ・カラーシ・アンドーとグラウンドメク・ドロイドB2EMOの動きを封じ、家探しを行った。マーヴァとB2EMOはプリ=モーに何も喋ろうとしなかったが、家の状況を知らないアンドーからB2EMOのコムリンクに連絡が入ってきた。モスクは通信を逆探知し、アンドーがいる方角を突き止めた。[5]
カーンとモスクはマーヴァを見張っておくためウエスト3とウエスト4をアンドー宅に待機させ、容疑者の居場所に最も近い東チームとの合流を急いだ。しかし一足先にイースト・ロットの第9ビルに到着した東チームは、レイエルが事前に仕掛けていた爆弾による先制攻撃を受けた。フェリックスの住民たちが街に金属音を響かせて互いに警戒を呼び掛ける中、カーンのチームは第9ビルへ急いだが、彼らが到着する前に東チームはイースト1を残して全滅してしまった。カーンとモスクはイースト1からの報告でアンドーに仲間がいることを知って警戒し、北チームをリックス通りに呼んで待ち伏せに備えた。[5]
カーンは通りに面した建物に入り、中にいたドゥウニ種族の住民の物音に反応して思わずブラスターを撃ったが、彼らはただの一般人だった。住民たちによる金属音が止んだ後、建物から外の様子をうかがっていたカーンは、背後からアンドーにMW-20ブライヤー・ピストルを突き付けられた。カーンは脅しに屈して武器を捨て、部隊の人数を明かした。カーンは両手を縛られて放置されたが、すぐにイースト1に発見された。その直後、建物からランドスピーダーが急発進し、モスクたちが集中砲火でその動きを止めた。カーンは勝利したと思い込んでモスクと目を見合わせたが、ランドスピーダーは無人で中には爆弾が仕掛けられていた。アンドーとレイエルは爆発で混乱に陥ったプリ=モーを残してスピーダー・バイクで逃げ去っていき、カーンは周囲の惨状にただ呆然と立ち尽くすばかりだった。[5]
失職[]
- 「だが安心しろ。君の首を誰かとすげ替えるわけではない。君は企業の独立性に引導を渡したんだ」
- ―シリル・カーンに対し、ブレヴィン監査官[出典]
フェリックスの事件では4名のプリ=モー職員が犠牲となった。プリ=モーの失態はすぐに帝国保安局の耳に入り、モーラーナ宙域の担当者であるブレヴィンISB監査官がコーポレート保安本部に送り込まれた。ブレヴィンは事件の責任者であるカーンとハイン、モスクらを集めて叱責し、今回の事件を受けてモーラーニ星系が恒久的に帝国の直接支配下に入ったと言い渡した。結果的に、カーンの失態によってモーラーナ宙域における企業宙域の独立性に終止符が打たれることになってしまった。ブレヴィンは3人にコムリンクや武器、スキャンドクを返却して本部から立ち退くよう指示した。またカーンは事後報告書を提出するよう命じられ[10]、のちにブレヴィンによってまとめられた事件資料への形だけのサインを求められた。[9]
再出発[]
帰郷と再就職[]
- 「お前は先のことを何も考えてない」
- ―シリル・カーンに対し、イーディ・カーン[出典]
職を失ったカーンはコルサントに帰ることになった。イーディは玄関口に現れた息子を平手打ちしたが、すぐに家の中に招き入れた。[10] カーンは実家で暮らしながら今後のことを考えていくつもりだったが、イーディは息子に明確なビジョンが無いことを知り、彼のおじであるハーロに頼んで再就職の口を見つけてもらうことにした。カーンはお節介を迷惑がったが、イーディは耳を貸さなかった。またカーンはプリ=モーからキャシアン・アンドーのホログラム画像を勝手に持ち帰っていた。おじに就職先を検討してもらっている間、彼は独りでこのホログラムを見つめて時を過ごした。[6]
やがてカーンはハーロから帝国標準局の仕事を紹介された。面接の日の朝、カーンはこの日のために仕立てた高襟の茶色のスーツを着たが、余計な個性を主張しすぎているとイーディから注意を受けた。朝食の途中、カーンはアルダーニで発生した強盗事件の報道を耳にし、興味を示した。事件の犯人は捕まっておらず、カーンは知る由もなかったが[4]、この事件にもルーセン・レイエルやキャシアン・アンドーが関与していた。[11] カーンはコルサントにある標準局のオフィスへ出向き、担当者のフロブから職場の説明を受けた。カーンはフロブに、モーラーナ1での仕事失ったのは殺人犯を捕まえようとしたためだと説明し、いつか汚名を返上するつもりだと意気込みを語った。フロブは、それならばカーンの記録を少々書き換えても構わないと語り、彼を燃料純度部に割り当てた。[4]
ミーロとの出会い[]
カーンは新たなスタートを切った後もアンドーの追跡を諦めなかった。再就職して1か月も経たないうちに、カーンは標準局データ・センターに5度にわたってアンドーの情報を問い合わせた。そのたび、彼はアンドーが“行方不明の燃料専門家”であるとか、“音信不通のエネルギー・エンジニア”、あるいは“帝国の報告書を偽造した疑いのある燃料純度部の現場責任者”であると虚偽の申告をした。6度目のアクセスをした日、標準局に帝国保安局のヒアート随行員とコーヴ随行員が現れ、カーンはISB取調室へ連行された。彼を呼び出したのは、ISBの監査官デドラ・ミーロ中尉だった。ミーロはブレヴィンの後任者であり、謎の反乱者“アクシス”(ルーセン・レイエル)やその関係者であるアンドーを捜索していた。ミーロはもともとカーンを参考人として呼ぶつもりだったが、彼が何度もアンドーの情報を問い合わせるので不審に思い、事情聴取の予定を早めたのだった。[9]
ミーロはカーンが何か企んでいるのではないかと考えていたが、すぐに彼の動機が自身の汚名返上であることを知った。ミーロはISB理事会に出席するためいったん退室し、その間ブレヴィン監査官が作成したフェリックスの事件の報告書をカーンに確認させた。ミーロが戻ってきた時、カーンはプリ=モーの上司の怠慢や、フェリックスにおける帝国の力不足、アンドーの協力者の存在が報告書に一切書かれていないと指摘した。しかしカーンは、アンドーの協力者、すなわち“アクシス”についてミーロを満足させるような追加の情報を提供することができなかった。ミーロはカーンに二度とアンドーの問い合わせをしないよう忠告し、標準局に彼の貢献を伝えておくと告げて聴取を打ち切ろうとした。その際、カーンはミーロに自分の不遇を強く訴え、自分ならアンドー捜索の力になれると主張した。ミーロは忠告を繰り返し、事件のことはもう忘れるよう告げて去っていった。[9]
しかしミーロはカーンに人生をやり直す機会を与えようと考え、実際に標準局に彼の貢献を伝えた。結果的にそれがカーンの昇進に繋がった。ある日の朝、カーンは母親が自分の部屋を嗅ぎまわっていることに文句をつけ、険悪な雰囲気になった。しかしカーンが昇進を伝えるとイーディは態度を一変させ、息子の成功を祝った。この頃、カーンはデドラ・ミーロに再び会うためISB本部付近をたびたび訪れては彼女の姿を探した。そして最初の出会いの翌月、カーンは出勤途中のミーロを待ち伏せし、会話するチャンスを掴んだ。[12]
カーンはミーロに昇進の件でお礼を言ったが、彼女はやり直すチャンスを与えただけだと答えた。ミーロはカーンが自分を付け回していることに嫌悪感を示したが、カーンは構わず喋り続け、自分と同じようにキャシアン・アンドーを追っている人と出会えたことへの感動や、彼女の一緒に同じ道を歩んでいきたいという願いを語った。しかしミーロはカーンに頭がどうかしていると言い放ち、もしまた自分に近づいたらアウター・リムの監獄に送ると警告して去っていった。[12]
再びフェリックスへ[]
- 「アンドーはどこだ!?」
「はい、そうなんです! 葬式に姿を現すかもしれません」 - ―シリル・カーンとライナス・モスク[出典]
ある日の夜、モーラーナ1で溶鉱炉従業員として働くライナス・モスクからカーンに久々の連絡が入った。通信状態が悪く映像と音声は途切れ途切れだったが、モスクはまだプリ=モーで働いている昔の仕事仲間から聞いた情報として、キャシアン・アンドーが最近死去した母親の葬儀に現れる可能性があることを伝えた。この時の通話では詳細を聞き出せなかったものの、カーンはアンドーを探しにフェリックスに行くことを決め、イーディに気づかれないようコルサントから出発する準備を整えた。[13]
マーヴァ・アンドーの葬儀当日、カーンはモスクと合流し、現地住民の格好をしてフェリックスの街へ向かうシャトル・フェリーに乗り込んだ。2人がリックス通りに到着した時、葬儀はすでに始まっていた。フェリックスを占領して間もない帝国の駐屯部隊は住民たちを牽制しつつ、アンドーを捕まえるため周辺一帯を警戒していた。住民の音楽隊は駐屯部隊の拠点があるファウンテン・スクエアを目指して行進し、カーンとモスクは広場周辺で野次馬に加わった(2人は気づかなかったが、このとき同じくアンドーを探しに来たルーセン・レイエルが彼らのすぐ後ろに立っていた)。カーンは通りの向こうでデス・トルーパーを引き連れて歩くデドラ・ミーロの姿に気づいて思わず身を乗り出したが、モスクに止められた。音楽隊の行進が終わると、マーヴァが生前に録画したホログラム映像が広場に投影された。カーンを始めとする大勢の人々が見守る中、亡きマーヴァは帝国への不満を述べ、フェリックスの住民たちに反乱を呼びかけた。駐屯部隊のヴァニス・ティーゴ大尉がホログラム映像を強制的に中断させたため住民たちは怒り、葬儀は暴動に発展した。[14]
騒ぎを見守っていたカーンは、住民のウィルモン・パークがメルジン・キーサックス中尉率いる帝国軍保安トルーパーの隊列に向かって爆弾を投げる瞬間を目撃し、ミーロを守るためとっさに野次馬の中から飛び出した。爆弾は帝国軍のサーマル・デトネーターと誘爆し、ファウンテン・スクエア全体を巻き込む大爆発を起こしたが、カーンは地面に伏せて爆風をしのいだ。帝国軍は住民への発砲を開始し、リックス通りは大惨事となった。そんな中、カーンはミーロが落としたブラスター・ピストルを拾い上げ、暴徒に連れ去られそうになっていたミーロに近づいた。彼は暴徒のふりをしながらミーロを付近の建物に誘導し、群衆から引き離すことに成功した。2人きりになった後、ミーロは手近な物を掴んで暴徒に反撃しようとしたが、相手がカーンだと分かると、恐怖と興奮で声を震わせつつも彼にお礼を言った。結局アンドーはこの事件を生き延び、帝国に捕まっていた友人ビックス・カリーンを解放してレイエルとともに帝国から逃げおおせた。[14]
人物[]
- 「従業員が2名殺されたんです。これで徹夜を厭んだら制服は着られません」
- ―シリル・カーン[出典]
シリル・カーンは白色人種の人間男性で、髪は濃い茶色、目は青色だった。プリオックス=モーラーナの副捜査官だったカーンは[3]、正義と秩序を心の底から信じていた。彼は野心的な捜査官であり、反乱の芽を摘んで犯罪者を捕まえることで、帝国内で名を残したいと考えていた。[15] 上司のハインをはじめとする大半のプリ=モー職員とは対照的に、カーンは犯罪捜査に積極的であり、殺人犯を捕まえるためなら徹夜も厭わなかった。プリ=モー職員2名が殺される事件が起きた際には、次の日の朝までに詳細な報告書をまとめ上げ、ハインに提出した。また彼はハインから本件を事故として処理するよう命じられたにも関わらず、独断で捜査を続行した。カーンはその高い基準を部下にも押し付けることがあり、徹夜を強いられることに不満を持つ一部の職員から疎まれていた。[3] 一方で、企業当局の怠慢を嘆くライナス・モスク巡査部長のようにカーンのやり方を強くする支持するプリ=モー職員もいた。[8]
カーンは優秀な捜査官を自認しており、実際に殺人事件発生から2日で犯人のキャシアン・アンドーを発見するに至った。[9] 彼はその過程で厳密にはプリ=モーの管轄外である惑星フェリックスで情報提供を呼び掛けるなど、やや強引な手段も採った。[3] しかし捜査の手腕とは対照的に、カーンは犯人捜索の現場では後手に回ることが多々あり、モスクに助言を仰いだり、モスクが彼の代わりにチームに指示を出す場面が目立った。彼はフェリックスにおける作戦で終始緊張した態度をとり、リックス通りで容疑者の待ち伏せを試みた際には、建物の中にいた一般市民の物音に驚いてブラスターの引き金を引いてしまった。アンドーに背後からピストルを突き付けられた時、カーンは最初だけ嘘をつこうとしたものの、レイエルが殺害を匂わせたためすぐに味方の戦力を白状してしまった。その後、アンドーとレイエルが逃亡に成功し、味方が爆弾で総崩れになった際、カーンはモスクの呼びかけにも応えず呆然として立ち尽くした。[5]
プリ=モーが帝国によって解体された際、カーンはブレヴィン監査官からの叱責に一言も反論することなく処分を受け入れた。[10] しかし彼はこの仕打ちに納得していたわけではなく、手柄に焦ったのは事実ではあるが、秩序を維持するため忠実に職務を遂行していた自分が処分を受けるのは不当だと考えていた。[9] そのため彼は捜査官ではなくなった後もキャシアン・アンドーの捜索に執着し、自宅にアンドーのホログラムを持ち帰っていた。[6] 彼はできうる限りの手段で凶悪な殺人犯を見つけ出そうと、再就職先である標準局のデータ・センターにもアンドーの情報を問い合わせた。彼がアンドーに執着する目的は治安の維持のほかに[9]、いわれのない汚名をそそぎたいという強い願いがあった。[4][9] また彼は捜査官でなくなった後も、アルダーニの強奪事件といった大きな犯罪のニュースに強い関心を示していた。[4]
シリルの母親、イーディ・カーンは息子が成功した人生を歩めるようにと努めたが[7]、息子が警察に向いているとは考えていなかった。[4] プリ=モーの職を失ってコルサントに戻った後、カーンは実家暮らしとなったが、しばしば母親と対立し、険悪な会話を繰り広げた。[4][6][12] カーンは母親が頼んでもないのに再就職の話を進めることや[6]、服装に口出しをしてくること[4]、無断で自室を嗅ぎまわっていることに不快感を示した。[12] 保安局で事情聴取を受けた際、カーンは当初は落ち着いてデドラ・ミーロの質問に答え、強気な態度を示した。しかしミーロの調査に協力できないまま取り調べが打ち切られようとした際、カーンは大声をあげて自分の境遇への不満を吐露した。[9] その後、ミーロのおかげで昇進を果たしたカーンは、彼女に対して一方的かつ強烈な執着を抱くようになった。[12]
制作の舞台裏[]
- 「自分が思うに(シリル・カーンは)規則正しく几帳面な性格で、強迫観念に駆られて自分の環境をなんとか構造化しコントロールしようとするのだが、どうも全くうまくいかない。彼は複雑な背景を抱えていて、シリーズが進むにつれてその詳細が見えてくる。彼の特殊な性格には分別が伴っているが、それは物事が自分の手に負えなくなるという恐怖感から来るものだ。実際のところ、強迫観念を抱えた刑事というのは仕事には適していて、私は『ああ、まさに天職だ』と思ったよ」
- ―カイル・ソラー[出典]
シリル・カーンは動画配信サービス Disney+ の実写TVドラマ・シリーズ『キャシアン・アンドー』のために制作されたキャラクターである。俳優はカイル・ソラー。[3] シリーズ開始に先立ち、2022年5月開催のイベント「セレブレーション・アナハイム」で『キャシアン・アンドー』関連商品の LEGO セットが発表された際、このキャラクターの存在が判明した。[16] 同年8月、ディズニーがリリースした宣材写真で実写画像が公開され[17]、シリーズ全体の詳細な情報解禁に伴いカーンの役柄も明かされた。[18] その後、シリル・カーンは2022年9月21日公開のシリーズ第1話『キャサ』で初登場を果たした。[3]
『キャシアン・アンドー』のショーランナーであるトニー・ギルロイは、ヒーローとヴィランの両方に人間らしい複雑さを与えるため、シリル・カーンやデドラ・ミーロにも視聴者が応援したくなるような要素を物語に取り入れた。[19] 2019年11月に行われた脚本会議で、ギルロイはカーンをどう描くかについて詳細かつ広範囲なアイデアを話し合った。また脚本家のボー・ウィリモンは、母親との関係のおかげでシリル・カーンを描くのは楽しかったと語り、“ルークの父親を除けばこの手の人間関係はほぼ初めてであり、完全に異質でダイナミックだ”とコメントしている。[20] カイル・ソラーは、シリル・カーンは善にも悪にもなれる複雑性を抱えているキャラクターだと考えた。そこでソラーは役柄についてギルロイと話し合った際、カーンはどこに行き着くのかと尋ねた。ギルロイの答えは“分からない”というものだったが、ソラーはギルロイが答えを知りつつも自分を信頼して、自分が直感的に演じるよう導いてくれたのだと判断した。ソラー曰く、カーンは自分が何者であるかを知らず、人生で成し遂げたい素晴らしい目標を持ちながら、それを実行に移す手段や鋭さ、発達に欠ける人物であるという。[21] ソラーはギルロイが本シリーズに取り入れた道徳的なあいまいさに魅了されたといい[18]、シリル・カーンの立体的なところや、帝国と反乱同盟のどちらの側についてもおかしくないグレーなところが魅力だと語っている。[22]
フェリックスの場面はイギリスのバッキンガムシャー州マーロウにつくられた入り組んだセットで撮影された。[18] トニー・ギルロイによればフェリックスの全場面の撮影が最初に行われた。そのためカイロ・ソラーがデドラ・ミーロ役のデニス・ゴフと初めて会って一緒に撮影した場面は、シーズン1のフィナーレだった。[23] 両者は最初のシーンを一緒に撮影した際、互いのキャラクターの野心と情熱の度合いをマッチさせようと取り組んだ。ゴフはシリル・カーンもデドラ・ミーロも自分が人に認められていないという欠乏感を抱えたキャラクターであると語っている。またソラーは2人のキャラクターは物語の主人公ではないが“それぞれの旅の主人公”であると語り、「自分たちの相対的な範囲内において正しいことをしていると本気で信じている。2人とも欠乏感から行動しており、人に見られたい、認められたいという願望がある。シリルの人生でそれが初めて実現するのは、デドラと出会ったときなんだ」とコメントしている。[19]
登場作品[]
- キャシアン・アンドー – キャサ (初登場)
- キャシアン・アンドー – 俺かもしれない
- キャシアン・アンドー – 報いの音
- キャシアン・アンドー – アルダーニ
- キャシアン・アンドー – やった側は忘れる
- キャシアン・アンドー – 声明
- キャシアン・アンドー – ナーキーナ・ファイブ
- キャシアン・アンドー – 誰も聞いちゃいない!
- キャシアン・アンドー – フェリックスの娘
- キャシアン・アンドー – リックス通り