スローン戦役(Thrawn campaign)は、銀河帝国のスローン大提督が9 ABYに引き起こした、一連の革新的な軍事作戦と政治工作である。スローン危機(Thrawn crisis)とも。スローンが実行した攻撃と牽制、政策は、新共和国とって初めてとなる、大規模な内外の紛争をもたらした。スローン大提督は未熟な新共和国政府を追い詰めたが、ビルブリンギの戦いで彼が横死を遂げたことにより、銀河帝国の進撃は止まった。その後、新共和国との戦いは、復活した皇帝パルパティーン率いる帝国に引き継がれた。
歴史
準備段階
- 「解く価値のある唯一の謎。反乱軍の完全、かつ徹底的な壊滅だ」
- ―スローン大提督[出典]

スローン大提督とイサラミリ
9 ABY、スローンは未知領域から姿を現し、銀河帝国の残存勢力を固め、銀河系を掌握するための作戦を練った。スローンは反乱軍の完全かつ徹底的な壊滅を“解く価値のある唯一の謎”と考え、軍事作戦を進めた。彼の最初の軍隊は、インペリアル級スター・デストロイヤー数隻と、その支援ラインによって成り立っていた。この時期、スローンは個々のスター・デストロイヤーを使い、ドローキーズ星系といった新共和国の境界にある星々を対象に、その防衛網の静かな調査活動を行った。
スローンの計画の最初の段階は、軍事力の低さを軽減することだった。出来る限り多くの主力艦を手に入れようとするスローン大提督は、モグラ艇を使って新共和国から軍艦を盗み出したり、カタナ艦隊の位置を特定してそれらを押収したり、新しい艦隊の乗組員としてクローンの軍隊を使用するなどの、様々な手段を考案した。クローン製造のため、スローンは皇帝パルパティーンが隠し持っていたスパーティ・クローニング・シリンダーを探し求めていた。彼はこれを使い、忠実な乗組員と兵士、パイロットを早いペースで補おうと考えていたのである。クローン製造の加速プロセスにおいて、不安定で狂ったクローンをつくらないために、スローンはフォースを遮断するバブルを生み出すクリーチャー、イサラミリを使うことにした。銀河共和国の最後の300年の間、イサラミリが持つ特性によって、その生息惑星であるマーカーはジェダイ・ナイトから孤立を保っていたという事実を、スローンは未知領域にいる間に学んでいたのだった。また、イサラミリは狂ったダーク・ジェダイ、ジョルース・シボースを相手にする上でもスローンの役に立つことになった。スパーティ・シリンダーはスローンに必要な分の兵士を提供したが、大提督には新しい艦隊を指揮するために必要な数の将校が不足していた。スローンは、ニアル・デクランがエンドアでして見せたようなフォースによる帝国軍の調整を、シボースがやってくれるだろうと考えた(ただし、スローンはエンドアの戦いで戦闘瞑想を行ったのはデクランではなく皇帝自身だろうと信じていた)。
拿捕する対象の位置情報を手に入れるため、スローンは惑星オブロア=スカイのさまざまな記録を保管するアーカイブ・コンピューターに対して襲撃を仕掛けた。情報を重要視するスローン大提督は、この攻撃によって、新共和国とその同盟の星々に関する最新の情報を手に入れた。必要とする情報を入手した最後の襲撃の後、スローンは新共和国の機動部隊との小規模な戦いに臨んだ。この戦いは、スローンがその軍事的才能を新共和国に示す最初の機会となった。相手部隊の指揮官の種族がエロミンであることを特定したスローン大提督は、エロミンの個性を利用した攻撃を行い、数で劣る勢力で新共和国の機動部隊を破った。
データの断片から、スローンはパルパティーンの秘密の倉庫、タンティス山が存在する惑星、ウェイランドの位置を突き止めた。スローンの旗艦<キメラ>はまず初めにマーカーに向かい、大提督の部隊はそこでタロン・カードと出会った。カードは中立を保ちながらも、大提督の部下ギラッド・ペレオン艦長に協力を申し出た。イサラミリを集めた後、ペレオンとスローンはウェイランドへと赴いた。バックパックで背負ったイサラミリによってフォースから防衛されたスローンは、シボースと話し合い、ルーク・スカイウォーカーやレイア・オーガナ・ソロ、レイアのお腹にいる双子と引き換えに、このダーク・ジェダイから協力を取り付けた。自分の意のままに出来る若きジェダイという報酬につられたシボースは、助力に同意し、スローンたちがタンティス山の秘密を調査することを許した。スローンはスパーティ・シリンダーのほかに、クローキング装置を手に入れた。
初期の攻撃

スルイス・ヴァンの戦い
タンティス山でイサラミリを使い、フォースを遮断させたスローン大提督は、スパーティ・シリンダーによってマクシミリアン・ヴィアーズやスーンティア・フェルらの遺伝子から何千体というクローンを大量生産し、本格的に軍事作戦を始動した。インナー・リムが帝国の手から解放されて間もなかったため、スローンはインナーおよびミッド・リムの惑星に慎重に狙いを定めた。プファッシュとニクロンに対する陽動攻撃によって、スローンは容易にスルイス・ヴァンの造船所へと至ることが出来た。TIEファイターに護衛されながら、クローキングされた貨物船がノーマッド・シティから盗み出した51隻のモグラ艇を運び込み、造船所にドッキングされた新共和国の宇宙船の拿捕を試みた。スローンは宇宙船を盗み出すつもりだったが、ランド・カルリジアンがモグラ艇のプラズマ・カッターを作動したため、スローンが手に入れるつもりだった宇宙船は役立たずになってしまった。しかしこの戦いにおけるスローンの損失はわずかで、新共和国が払った犠牲は多大だった。スローンにとって幸運なことに、スルイス・ヴァンでの失敗と同時期、大提督に挑む可能性のある新共和国の指揮官、ギアル・アクバー提督が、ボースク・フェイリャによって逮捕されていた。
スルイス・ヴァンでの挫折があったにも関わらず、スローンの軍事作戦が停滞することはなかった。スローンは軍事力を確立しながらも新共和国の星々に対してゲリラ攻撃を継続し、惑星タナブやサーカ付近の輸送船団に損傷を負わせた。大提督の軍事作戦は新共和国船団の破壊ではなく、彼らから防衛力を奪うことで、輸送船団のためにより多くの船を割くか、あるいは領域を丸々放棄するかのどちらかを新共和国に強いることを目的としていた。いずれの結果においても新共和国は弱体化を免れなかった。コア・ワールドのパントロミンから始まった侵攻によって、スローンは178隻のドレッドノート級重クルーザーを手中に収め、予定よりも早く攻撃を開始することが出来るようになった。増加するクローンの兵士と新しいクローキング装置、そして“ダーク・フォース”(暗黒艦隊)によって、スローンは抵抗勢力を一掃する準備を整えた。
大規模な侵攻
- 「経済と心理学だよ、艦長。今は帝国軍の力を吹聴してくれる市民の生き残りが多ければ多いほどよい。彼らを滅ぼすのはそのあとのことだ」
- ―スローン大提督[出典]

ユキオを襲うスローンの軍隊
新しい帝国艦隊は、主要な農業惑星ユキオや、オード・パドロンにある新共和国軍基地を含む、コレリアン・ラン沿いの宙域を征服していった。陽動作戦によって数多くの惑星から防衛軍をおびき出したスローン大提督は、ウィストリルの征服と、10を超える宙域に揺さぶりをかけることを宣言した。
新共和国が攻撃によって動揺したため、スローンはより多くの軍隊を他の前線へと派遣し、クァト・クリスタックやケタリスを攻め、新共和国の資源供給を妨げた。スローンはオード・マンテルやジェナリスといった境界線の惑星を制圧することで帝国の境界線を確保し、優れた戦術と火力を用いて新共和国を圧倒する。ニクロンへの二度目によって、スローンは攻撃を続けるための資源を手に入れた。
スローンの数的有利なドレッドノートの大艦隊が個々の戦場に姿を現したため、新共和国の艦隊もそれぞれの宙域に殺到し、宙域規模、あるいは惑星規模の戦いが繰り広げられた。ムリストで軍事陽動を行ったスローン大提督は、コルサントを脅かす攻撃も行えるようになった。ガーム・ベル・イブリスがコルサントの防衛軍を指揮し、スローン大提督には多大な犠牲を払ってコルサントを攻めるか、撤退するかの選択肢が与えられたかに見えた。しかしスローンは、クローキングされた2ダースの小惑星を展開するという手段を選んだ。これらの小惑星にコルサントを封鎖させ、300を超える小惑星のシグナルを偽造することで、スローンは何の戦力も犠牲にすることもなく、首都惑星に効果的な一撃を与えた。
新共和国は反撃のためにビルブリンギに軍隊を寄せ集め、その間スローンを野放しにした。クリスタル重力場選別装置を造船所から奪還し、スローンが攻撃の頼みの綱としているものを破壊することに望みをかけた新共和国は、銀河系各地で艦隊を構成した。彼らはここの宇宙船を撤退させ、宇宙船を出撃させるための戦闘集団を再構築したのである。
スローンに対して、タングリンを攻撃するかのように見せかけた新共和国は、次の決戦が帝国を破る第二のエンドアの戦いになると信じ、ビルブリンギに対して攻撃を仕掛けた。しかしスローン大提督は彼らに罠を仕掛け、完全に包囲された新共和国艦隊を襲撃する。新共和国は完全に敗北したかに思われた。
帝国の他の動き
スローン大提督は小規模な軍事力を使い、戦略および戦術的に優れた戦いを展開していた。そのため、彼の艦隊が帝国残存勢力の総力を現していたわけではなかった。クローンの肉体によって復活した皇帝パルパティーンは、当時すでに惑星ビィスで力を固めており、残っていた帝国軍のうち、かなりの勢力がスローンを無視して皇帝のためにディープ・コアへと集っていた。勢力を再建するまでの間、スローンに新共和国の気を紛らわせる役目を任せようとしていたのか、あるいは長期間にわたって精神を肉体から離脱させていた影響で、スローンのことを脅威として見るようになっていたのか、皇帝パルパティーンの意図ははっきりしていない。
ビルブリンギの戦いと敗北
- 「新共和国が大提督の吹く笛で踊ると、本気で思っているのか?」
「踊るとも。大提督は敵を研究しつくしておられる」 - ―ジョルース・シボースとギラッド・ペレオン[出典]

ビルブリンギの戦い
新共和国には打つ手がなく、スローンは完全勝利を目前にしていた。しかし彼の才能でも扱いきれないほど多くの要因が重なり、それらが最高点に達した時、大提督は敗北を喫することになった。
惑星ホノーグルにおいて、プリンセス・レイアはスローンがノーグリの故郷に対して救済を行わず、被害が続いているという帝国の欺瞞を暴いた。ノーグリの民は帝国に対する忠誠を捨て、密かにスローンを妨害するようになった。ビルブリンギの戦いにおいて、スローンのボディガードを務めるノーグリのルクは、大提督を暗殺した。新共和国のローグ中隊と密輸同盟は力を合わせて造船所の防衛網を突破し、2隻の新共和国のアサルト・フリゲートが造船所へと進軍した。スローンが死んだため、戦いの判断はギラッド・ペレオン艦長に委ねられた。大提督なくして戦いの流れを変えることが出来ないと判断したペレオンは、撤退命令を出した。
惑星ウェイランドでは、プリンセス・レイア、ハン・ソロ、タロン・カード、ルーク・スカイウォーカー、マラ・ジェイドが、狂ったジェダイ・マスター、ジョルース・シボースと戦った。彼らはルークのクローン、ルウク・スカイウォーカーとシボースを殺し、帝国に兵力を供給していたクローン施設を破壊した。ガロスIVではガロス・レジスタンス運動が惑星を取り戻し、クローキング装置のテクノロジーに使われたハイブリディウムの供給源を断つことで、帝国が対等に戦うために保持してきた利点を葬った。クローキング装置に対する制限によって、スローン大提督を失った帝国はこの技術を使うことが出来なくなった。
これらの敗北と、ケイソル宙域の損失によって、銀河系の半分を手中に収めていたスローン大提督の帝国は、指導者不在のまま攻勢を維持することが出来なくなり、ものの数時間で優位を失ってしまった。スローンのいない帝国は崩壊し、クローンの肉体で復活した皇帝パルパティーンによる勢力強化の試みがそれに代わって台頭した。
結末
ビルブリンギの戦いによって、スローンが開始した軍事作戦は結末を迎えた。大提督を失った帝国軍は撤退を始めたため、復活した皇帝が次なる大規模攻撃を開始するまでの間、新共和国は短い平和の時代を享受する。アクバー提督によれば、新共和国はスローン戦役で軍隊の10パーセントの命を犠牲に払い、30パーセントが負傷したが、それも平均値に過ぎず、スローンの攻撃を受けた惑星の荒廃もまた深刻だとのことだった。これは領土の3分の1をスローンに奪われた新共和国が、40パーセントの戦力を失ったことを意味しており、彼らは領域の支配力を以前より弱められた。
さらに、この戦いは新共和国の政治的な統一を挫いた。戦いの中で行った政治的行動によって、ボースク・フェイリャはその政治的キャリアのほとんどを失ってしまった。ミッド・リムの星々は新共和国がスローン大提督の攻撃を防げなかったことに憤慨し、新共和国はやがてコルサントが復活した皇帝の手に落ちて以降、政治的な泥沼状態を経験しながら辺境へとのがれることになった。
一方で、密輸同盟の形成やガーム・ベル・イブリスの軍隊復帰、新共和国軍の組織と規模拡大、ウェイランドやノーグリの民の解放など戦役がもたらした良い面もあり、他のフォース使用者の発掘に目を向け始めたルーク・スカイウォーカーは、やがてジェダイ・プラキシウムを設立する。
帝国の側から見れば、スローン戦役はニュー・オーダーの理想に対してよくない影響を与えた可能性がある。スローン大提督の死後、彼が結び付けていた異種の軍隊は、コルサントを征服するために手を合わせた後、帝国内戦を開始した。帝国内部の者たちは、領土の拡張に焦点を当てて、それらの惑星や星系を維持する計画を立てなかったとして、スローンの軍事作戦を非難した。しかし、スローンが引き起こした事象について、再台頭をもくろむパルパティーンが練った慎重な計画の一部だったのか、あるいはスローンには死ぬ前に達成できなかった計画が存在したのか、真相は不明である。
戦闘
スローン戦役に参加した艦隊
- スローンの連合の形成
- ドローキーズ星系の襲撃(44:2:25)
- サアーンの襲撃(44:3:5)
- スローンの初期の攻撃
- オブロア=スカイの情報侵略(44:4:15)
- エロミン機動部隊の破壊(44:4:15)
- ビミッサリの任務
- プファッシュの戦い(44:4:25)
- ノーマッド・シティの襲撃(44:4:27)
- キャッシークの任務
- マーカーの救出
- スルイス・ヴァンの戦い(44:5:17)
- タナブ作戦(44:5:18)
- サーカの襲撃(44:5:30)
- リヌーリの襲撃(44:6:3)
- ニュー・コヴの襲撃(44:6:8)
- ホノーグルの任務(44:6:10)
- キメラの救出
- パントロミンの襲撃
- カタナ艦隊を巡る戦い(44:6:29)
スルイス・ヴァンの戦い
- スローンの主要な攻撃
- シェリスの戦い(44:7:6)
- ビミッサリの戦い(44:7:10)
- バロスの戦い(44:7:20)
- スヴィヴレンの包囲(44:7:24)
- オード・パドロンの戦い(44:7:29)
- クロンドレの戦い(44:7:29)
- フィルヴの戦い(44:7:29)
- アンドーの戦い(44:7:29)
- ユキオの戦い(44:7:29)
- エリアドゥの戦い(44:7:30)
- ポダリスの任務
- ウーストリの戦い(44:7:31)
- オード・マンテルの戦い(44:8:1)
- ノーマッド・シティの破壊(44:8:1)
- クァト・クリスタックの戦い(44:8:1)
- コルサントの襲撃
- トローガンの待ち伏せ
- ビルブリンギの襲撃
- ヤグデュルの戦い(44:8:7)
- アンカロンの戦い(44:8:8)
- ムリストの戦い(44:8:10)
- コルサントの包囲(44:8:11)
- ジェナリスの陥落(44:8:19)
- ケタリスの戦い
- アイソアの戦い(44:8:21)
- アブレガド=レイの戦い(44:822)
- ザ・フェルの戦い(44:8:23)
- タンティス山の攻撃(44:8:27)
- ビルブリンギの戦い(44:8:27)
登場作品
- タトゥイーン・ゴースト
- 帝国の後継者 (初登場)
- 暗黒の艦隊
- 最後の指令
- X-wing: Isard's Revenge
- ダーク・エンパイアI (言及のみ)
- 偽りの盾 (言及のみ)
- 過去の亡霊 (言及のみ)
- 未来への展望 (言及のみ)
- 暗黒の潮流 (言及のみ)
- レムナント (間接的に言及)
- ジョイナーの王 (間接的に言及)
参考資料
- スター・ウォーズ クロノロジー
- スター・ウォーズ 全史
- 帝国の大提督たち (スター・ウォーズ・インサイダーEX収録)
- スター・ウォーズ アルティメット・ビジュアル・ガイド 特別篇
Thrawn_campaign ‐ Wookieepedia
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