大気(Atmosphere)は天体を覆う気体の層である。惑星や衛星、大型の小惑星といった銀河系の多くの天体は、大気を構成する気体の集まりを保持する重力を生み出せるだけの質量を有していた。一般的に生命は気体の膜で覆われた惑星や衛星で進化を遂げ、銀河系のほぼあらゆる種族は呼吸するための大気を必要とした。また宇宙船や宇宙ステーション内で人工的に維持される呼吸可能な空気源を「大気」と呼ぶこともあった。宇宙船は内部の空気環境を適切に保つ必要があり、乗員は着陸した星の大気に対応できる準備を整えておく必要があった。[1]
生命を維持するのに適した大気であるかどうかは、そこに含まれる気体とその相対的な濃度によって決定された。惑星の大気組成は、惑星の形成要素の化学的性質による部分もあれば、のちに火山活動などによって内部から放出されたり、住民の活動によって生み出された気体による部分もあった。またガス巨星は主に水素とヘリウムで構成されており、恒星の組成と似ているが、質量が小さいため恒星のような核融合反応は起こさなかった。通常、ガス巨星は溶岩の核を液体状金属水素の層が取り巻いており、大気の最外層にメタンやアンモニアの雲が存在した。ベスピンやタロラーンのように、生命が存在できるほど豊富な酸素を有するガス巨星も稀に存在した。[1]
大気の分類[]
大気には標準的な分類法があり、多くの旅行者がこれを参考にしていた。このシステムは対象の天体で必要となる予防措置を基準に、大気を4つのカテゴリーに分けていた。ただし必要な予防措置は種族によって異なり、酸素呼吸種族にとっては快適な環境、もしくは耐えられる環境が、アンモニアやメタンを呼吸する種族にとっては有害なこともあれば、その逆もあった。分類は以下の通り:[1]
タイプI大気[]
呼吸可能な大気
銀河系の知覚生物の大半は、炭素化合物を基本とし、水を溶媒とする生化学的構造を有していた。一般的に彼らは酸素と窒素、水素の混合物を含む大気を呼吸して進化した。酸素と窒素、水素の混合大気が、さまざまな類似種族が呼吸可能な適切なレベルで存在する場合、タイプI大気に分類された。またこうした大気は微量ながらその他の気体を含む場合もあった。タイプI大気の星では、必ずと言っていいほど何らかの土着の生命が発達していた。[1]
タイプI大気に分類されるあらゆる惑星の空気は、植物による自然の大気循環や、酸素を遊離して呼吸可能な形にリサイクルしてくれるその他の化学的メカニズムに依存していた。こうしたメカニズムが無ければ、大気中のあらゆる酸素は他の元素と結合し、二酸化炭素などの化合物に変化することとなった。[1]
タイプIに分類されている星でも、一部の種族に対しては、長期にわたる有害な影響を与えかねない微量の気体が含まれていることもあった。工業化が進んだ惑星にみられる、大気汚染の原因となる物質などがそれにあたる。こうした微量気体は、常に空気をフィルタリングし、空気洗浄装置で清潔に保たない限り、現地の住民にも呼吸が苦しくなるなどの悪影響を及ぼすことがあった。[1]
タイプII大気[]
呼吸マスク着用が望ましい大気
通常、タイプIIの大気にも土着の生命体を養うのに適切なレベルの酸素と窒素が含まれていた。一部の非現住種族もタイプII大気を問題なく呼吸することができたが、それはその種族の生理機能しだいだった。こうした環境では、気圧が足りていなかったり、汚染物質や微量気体が含まれている等の原因で、人間をはじめとする多くの生物に短時間で不調や害をもたらす恐れがあった。これは人間が高い山に登った際に経験する高山病や、汚染された空気や煙を吸ったときに起きる息苦しさに似た症状である。[1]
タイプIII大気[]
呼吸マスクが必要な大気
タイプIII大気の惑星でもしばしば土着の生命が発達することがあり、生理機能や生化学機能しだいでは一部の外来種族もこうした大気を呼吸することができた。しかし人間をはじめとする大半の種族はタイプIII大気を吸うとただちに、あるいは徐々に不調になり、やがて機能を喪失し、多くの場合ある程度の長期的な後遺症が残った。その原因として、大気中の酸素や窒素が適切なレベルに達していないこと、大気圧が不十分であること、あるいは汚染物質や微量ガスが存在することなどが挙げられる。[1]
酸素呼吸種族の場合、タイプIII大気は有害な影響をもたらす可能性があるため、呼吸マスクの装着が必要とされた。しかしタイプIIIの大気は露出した皮膚といったその他の組織には悪影響がないため、環境スーツまでは身に着ける必要はなかった。[1]
タイプIV大気[]
環境スーツが必要な大気
可燃性か有毒の大気はタイプIVに分類された。また、事実上大気がほとんど存在しない空気が薄い星もタイプIVと呼ばれた。すべてのタイプIV大気では、宇宙服のような密閉型の環境スーツを身に着けて保護されていなければ、銀河系のほとんどの種族は命を落とすか機能を喪失した。タイプIV大気の惑星が生命を養うことはほとんどないが、こうした大気に耐えられたり、そこで繁栄できる種族もごく一握りだが存在した。[1]
文化[]
銀河系の知覚種族はリパルサーリフトと呼ばれる反重力テクノロジーを搭載した乗り物(リパルサークラフト)を使って大気圏内を移動した。タトゥイーンのような乾燥した砂漠の惑星では、大気中から水分を集めるために水分凝結機が使用されていた。また、種族にとって有害な大気中で活動するために呼吸マスクやヘルメットが使われることがあった。ガスに覆われた惑星ベスピンでは、「ライフ・ゾーン」と呼ばれる高高度の呼吸可能な大気中にクラウド・シティが建造された。