- 「全砲台、敵戦車を撃て!」
- ―クローン・キャプテン・レックス[出典]
NR-N99パースエイダー級ドロイド・エンフォーサー(NR-N99 Persuader-class droid enforcer)、通称NR-N99タンク・ドロイド(NR-N99 Tank Droid)、スネイル・タンク(Snail tank)はテクノ・ユニオンが製造したドロイド・タンクである。内蔵されたドロイド脳によって完全に自律して行動することができるが、中に乗り込んだパイロット・ドロイドによる操縦も可能だった。タンク・ドロイドは中央の巨大な無限軌道で前進し、左右のアウトリガー・ホイールでバランスを取ることで、ほとんどあらゆる地形を移動することができた。また最大で8体のバトル・ドロイドが左右のアウトリガーの上に乗り、戦闘態勢をとったまま移動することができた。本体両面の駆動軸のハブには様々な兵器を搭載可能であり、主に重連射式ブラスター砲やイオン砲、ミサイル・ランチャーで武装することが多かった。
企業団体のコーポレート・アライアンスはNR-N99タンク・ドロイドを先兵として好んで使用し、この戦車の製造に出資した。加盟企業が係争に巻き込まれた際の仲介を担当していたコーポレート・アライアンスは、“交渉”を優位な形で和解に持ち込むための道具としてタンク・ドロイドを活用した。銀河共和国時代の後期、アライアンスとテクノ・ユニオンはいずれも独立星系連合に参加し、タンク・ドロイドはクローン戦争において分離主義勢力ドロイド軍の戦力として活躍した。戦争中、タンク・ドロイドはクリストフシスやマラステア、マイギートー、ヤーバナといった数々の戦場へ派遣され、機動力には欠けるものの、安定した火力を味方に提供した。しかしタンク・ドロイドは視界が狭いという欠点を抱えており、キャッシークの戦いではカチーロのウーキー戦士たちがこの弱点を突いてタンクを破壊した。
特徴[]
機体[]
テクノ・ユニオンによって製造されたNR-N99パースエイダー級ドロイド・エンフォーサー[1]、通称NR-N99タンク・ドロイドは[9] 全長10.96メートル、全高6.2メートルの機体を備えた戦車[3]、ドロイド・タンク[1]、アタック・クラフト[10]、装輪兵器である。スネイル・タンク(カタツムリ戦車)の異名を取るこのドロイドは[6]、中央の巨大な無限軌道にかかる駆動力で走行し、両サイドに取り付けられたアウトリガーの補助クローラーでバランスを取った。[4] 最高時速は60キロメートル(37.3マイル)であり[1]、歩行タイプのドロイド・タンクと比べてスピードと機敏性に欠けていた。[7]
タンク・ドロイドはほぼあらゆる地形を走破可能であり[6]、高トラクションを誇る駆動トレッドは、地形に合わせて種類を換えることもできた。例えばクローン戦争で惑星マイギートーに配備された際には、重要な橋の構造に与えるダメージを最小限にするため特別なトレッドが用いられ、惑星マラステアでは、走行中に巻き上げた塵が他のドロイド兵士の視界を損なうことのないよう、溝の少ないトレッドが使われた。[4] またキャッシークでは浅瀬のラグーンを移動するためにポンツーン・トレッドが装備された。[11]
他のバトル・ドロイドと同様[12]、NR-N99ドロイド・エンフォーサーもドロイド脳を搭載しており、ドライバーがいなくても[6] そのコンピューター・ブレーンによって自律して行動できるよう設計されていたが、1体のパイロット・ドロイドによる運転も可能だった。[7] またアウトリガー・ストラットの上に最大8体(両サイドに4体ずつ)のバトル・ドロイドが乗って戦闘態勢を取り、本体側面のキャノンを掴みながら[4] 戦場を移動することができた。[8] タンク・ドロイドは頑丈な装甲を誇り[3]、丈夫なトラックを収めた本体側面部には熱交換パネルが取り付けられていた。[7]
装備[]
NR-N99タンク・ドロイドはさまざまな武器を搭載可能だったが、主に重連射式ブラスターとイオン砲[4]、震盪[5] ミサイル・ランチャーで武装することが多かった。これらのキャノンは本体両面の駆動軸のハブから延びるアウトリガー・ストラットに固定された。この武器マウントは[4] 角度可変式で[12]、スタビライザーを備えており、タンク・ドロイドが走行中も揺れを補正し、正確な射撃を可能にした。[4]
タンク・ドロイドは本体上部に高性能の立体視覚センサーを備えていた。[4] この赤いフォトレセプターの“目”は[6] アーマーで保護されており[7]、ダメージを避けるために格納も可能だった。視覚センサーを長いバーの先端に掲げることで、ボディに遮られない良好な視界を確保する工夫を施されていたが[4]、横方向の視認性が低いという欠点があった。[11]
センサーの後ろには2本の追跡送信機およびコマンド・コントロール・アンテナが取り付けられていた。タンク・ドロイドは自律して行動する際にはこのアンテナで本部からの司令を受信し、完全な制御下で動く際にはドロイド・コントロール・コンピューターからの命令を受信した。また彼らは小さいアンテナを使い、自分たちの位置を戦術コンピューターに送信した。[4]
用途[]
- 「クローン軍は後退、先頭の戦車は街の中央に達しました」
「敵の重砲陣地まで一気に突っ走れ!」 - ―バトル・ドロイドとウォーム・ロースサム将軍[出典]
タンク・ドロイドはその巨大な無限軌道を駆使して最新鋭の武器弾薬を戦場まで運ぶことを目的に設計されており、まさに巨大な戦車そのものと言えるドロイドだった。[9] タンク・ドロイドは頑丈なトラックを使って戦場を前進し、容赦ないブラスターの銃撃とミサイル、イオン砲を敵に浴びせた。[7] さながら散弾銃のようにエネルギー弾の雲をまき散らすタンク・ドロイドは、特に非装甲・軽装甲の歩兵にとって、至近距離において極めて危険な存在だった。[13] 兵器を満載したタンク・ドロイドは、分離主義勢力のほかのドロイドと比べて動きが遅く、機敏さに欠けたが、頑丈さと火力で欠点を補っていた。[11] タンク・ドロイドは正面攻撃に向いており、侵略部隊の基幹的存在として活躍することができた。[10]
コーポレート・アライアンスはタンク・ドロイドを好んで使用した。[3] 銀河系の巨大企業を代表し、交渉窓口として活動していたアライアンスは、加盟企業が何らかの係争に巻き込まれた際、“交渉”を自分たちに有利に進めるための道具としてタンク・ドロイドを活用した。その際、タンク・ドロイドは交渉の障害となるもの(有機生命体や建造物)を問答無用で踏みつぶしたことで有名になった。[4] このドロイドは多様な破壊兵器を搭載していたが、敵対する者を巨大な回転輪で踏みつぶすことを特に好んでいるようだった。タンク・ドロイドは必ずしも優秀な兵士とは言えないまでも、あえてこのドロイドの前に立ちはだかろうとする者よりは、明らかに知性があった。[9]
歴史[]
- 「身を隠しているんだ。お前も隠れろ!」
「冗談でしょう。相手はたかだか千体ほどのドロイドです」 - ―ヤーバナの戦いのさなか、オビ=ワン・ケノービとアナキン・スカイウォーカー[出典]
NR-N99パースエイダー級ドロイド・エンフォーサーはもともと、コーポレート・アライアンス保安軍が企業の資産を守り、労働者の暴動を鎮圧するための戦力として[13]、 テクノ・ユニオンによって製造された。クーリヴァーのパッセル・アージェンテ監督官率いるアライアンスは[4] タンク・ドロイドの武装に感銘を受け、このタンクの生産に多額の出資を行った。[5] アライアンスは潤沢な資金を背景に、加盟企業の意思を押し通す組織となり、タンク・ドロイドはその最も恐るべき先兵となった。[4] 22 BBY[14]、テクノ・ユニオンやコーポレート・アライアンスはドゥークー伯爵率いる独立星系連合の傘下に加わり[15]、タンク・ドロイドは分離主義勢力ドロイド軍の戦力となった。[1] この重タンクは分離主義勢力の最も危険な戦闘ビークルのひとつであり、戦争が激しくなると、需要に応えるべく製造が拡大され、間もなくパースエイダーが銀河中を跋扈することになった。[13]
クローン戦争序盤の22 BBY[14]、分離主義勢力は惑星クリストフシスを占領し、タンク・ドロイドや装甲型強襲用戦車(AAT)といった戦車や、DSD1ドワーフ・スパイダー・ドロイドやオクトゥプタラ・トライ=ドロイド、LR-57コンバット・ドロイド、B1バトル・ドロイドおよびB2スーパー・バトル・ドロイドなどからなる地上軍を配備した。[16] クリストフシスの戦いのさなか、ジェダイ将軍オビ=ワン・ケノービとアナキン・スカイウォーカー率いる共和国グランド・アーミーがクリストフシスの封鎖を破って首都チャレイドニアに降下し、ウォーム・ロースサム将軍率いるドロイド軍と膠着状態に陥った。[5]
ロースサムはタンク・ドロイドやAATからなる戦車部隊を進撃させ、チャレイドニアへの再侵攻を指揮した。しかし首都に設置された共和国軍のAV-7対ビークル砲による砲撃が激しく、分離主義勢力の支配区域までいったん退却を強いられた。重砲への対策として、ロースサムは移動式の偏向シールド発生装置を用意し、バトル・ドロイドの隊列を巨大なシールドのドームで保護しながら二度目の進撃を開始した。またこの時、タンク・ドロイドとAATの増援が追加された。[5] 作戦は功を奏し、ロースサムの部隊はケノービ将軍率いるクローン・トルーパーを追い詰めた。しかし分離主義勢力の陣営にもぐりこんだスカイウォーカーとアソーカ・タノがシールド発生装置を破壊したため、戦況は一気に逆転した。クローン・キャプテン・レックスはシールドを失った敵軍への砲撃を命じ、タンク・ドロイドとAATはAV-7重砲によって次々と破壊されていった。[16]
21 BBY[14]、タンク・ドロイドを含む分離主義勢力の大部隊が惑星マラステアへ配備され、原住民であるダグや共和国軍と戦いを繰り広げた。Tシリーズ・タクティカル・ドロイド[17] TN-123[11] の指揮の下、分離主義勢力はドージ・ナカ・ウラスの拠点であるインペリアル・パレスを目指して進撃し、第501軍団のクローン・トルーパーと激しい銃撃をかわした。タンク・ドロイドは隊列の後方に配置され、進軍するバトル・ドロイドの兵士を支援した。共和国はこの戦いでエレクトロ=プロトン爆弾を初めて使用し、タンク・ドロイドを含む全ドロイドは爆弾着弾時の衝撃波に飲み込まれて破壊されるか、大規模な電磁パルスによって機能を停止した。[17]
戦争終盤、タンク・ドロイドは第三次マイギートーの戦いに投入された。[18] また19 BBYのヤーバナの戦いでは、タンク・ドロイドを含むドロイドの大軍がヤーバナの都市部へ続く橋を封鎖し、ケノービ将軍率いる共和国軍第212突撃大隊の前進を阻んだ。しかしドロイド軍の指揮官であるスーパー・タクティカル・ドロイドがスカイウォーカーによって破壊された後、橋の下から出現した第501軍団のクローン・ジェットパック・トルーパーがドロイド軍に立体攻撃を仕掛け、形勢逆転のチャンスを作った。[19]
19 BBYに発生したキャッシークの戦いでは、多数のタンク・ドロイドがリンウォード将軍率いる侵略部隊の一員としてウーキーの都市を攻撃した。[11] 正面攻撃に最適なタンク・ドロイドは、カチーロにおける分離主義勢力地上軍の基幹部隊となった。[10] タンク・ドロイドにはポンツーン・トレッドが装備され、ワータキ海の浅瀬を渡ってカチーロへ進軍した。タンク・ドロイドとドワーフ・スパイダー・ドロイド、クラブ・ドロイドは、キャッシークの深淵に棲むという、ウーキーの物語に登場する悪夢の獣のように波間から姿を現したが、カチーロの防衛隊はこの機械の怪物を恐れることなく戦った。カチーロには、ウーキーの味方の共和国軍を率いるルミナーラ・アンドゥリ将軍の命令で新たな防衛線が敷かれており[11]、ウーキーの戦士とクローン・トルーパーが海から出現したドロイド軍を浜辺で迎え撃った。[8]
キャッシークに配備されたタンク・ドロイドは、共和国がワワート諸島に展開したHAVw A6ジャガーノートに応戦した。ドロイド軍がカチーロに到着すると、アンドゥリは左側面の防衛を強化するため移動した。またクインラン・ヴォス将軍はウーキーのオーヴェイアー・ジェット・カタマランを先頭とする空中からの攻撃の指揮を執った。ウーキーはリパブリック・ガンシップよりも小回りが利くカタマランやラドー・ナスプ・フラッタークラフトを駆使して分離主義勢力の砲撃をかわし、厄介なタンク・ドロイドに奇襲を仕掛けた。またウーキーの戦士は、側面の視認性と防御力が低いタンク・ドロイドの欠点を突き[11]、空中から機体側部に飛び降りて爆弾を仕掛け、タンクを爆破することに成功した。[8]
制作の舞台裏[]
タンク・ドロイドはもともとジオノーシスの戦いに参加する数多くのドロイドの一種として、映画『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002年)の制作終盤に作り出された。制作現場ではスネイル・ドロイド(カタツムリ・ドロイド)とあだ名されていた。クローン・トルーパーの隊列を突っ切るタンク・ドロイドの精巧なアニマティクスも制作されたが、最終的にこれらのシーンは『クローンの攻撃』からカットされた。[20] その結果、タンク・ドロイドの初登場作品は2005年の映画『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』となった。[8]
タンク・ドロイドと呼ばれてはいるものの、『シスの復讐』では機体の中にパイロット・ドロイドの姿があり、完全自動式のビークルではないことが示唆されていた。[20] のちに『スター・ウォーズ ビークルのすべて』をはじめとする正史の設定資料で、タンク・ドロイドはドロイド脳で自律して行動するこもできるが、パイロット・バトル・ドロイドによる運転も可能であると明言された。[6]
タンク・ドロイドの両サイドには重ブラスターとイオン砲が1門ずつ搭載されている。[7] 『スター・ウォーズ ビジュアル・エンサイクロペディア』(2017年)では銃口部分が太い方のキャノンを重ブラスターと呼んでいるが、[12]、同じ画像を掲載している『スター・ウォーズ ビジュアル・ディクショナリー新完全版』および『スター・ウォーズ ビークルのすべて』(いずれも2018年)では細い方を重ブラスターとしている。[6][7]
登場作品[]
- Star Wars バトルフロント II
- スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃 (削除されたシーン)
- スター・ウォーズ クローン・ウォーズ
- クローン・ウォーズ – いにしえの巨獣
- スター・ウォーズ:ケイナン2 ファースト・ブラッド
- クローン・ウォーズ – 忘れがたき旧友
- スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 (初登場)
- バッド・バッチ – 余波 (回想シーン)
- Star Wars ジェダイ:フォールン・オーダー (残骸のみ)
参考資料[]
脚注[]
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